第20回 経営者が「嫌われ役」を引き受ける理由

嫌われ役を引き受ける経営者が一人で判断を下す様子。感情を抑え統制で組織を守る戦略的リーダーシップ。
目次

経営者が「嫌われ役」を引き受ける理由

―― 感情ではなく、統制で組織を守る ――

経営をしていると、
どうしても避けて通れない役割がある。

それが、嫌われ役

決める。
断る。
線を引く。
ダメなものはダメと言う。

正直、得意な仕事ではない。
でも、これを放棄した瞬間、
組織は静かに壊れ始める。


① 嫌われたくない経営は、必ず歪む

「空気を悪くしたくない」
「頑張ってくれているし」
「言わなくても分かってくれるはず」

こうした判断が積み重なると、
一見うまく回っているように見えて、
内部ではズレが広がっていく。

行動心理学では、これを
正常性バイアス と呼ぶ。

人は
「今まで大丈夫だった」
「大事にはならない」
と考え、問題を先送りする。

経営者が嫌われ役を避けるのは、
この正常性バイアスにハマっている状態だ。


② 正直、これは自分の得意分野ではない

ここは正直に書いておく。

自分が直接言うと、
「きつい」
「傷つく」
と言われることが多い。

そして実際、
自分が言う時は、怒っていることが多い。

理由は単純で、
非効率や時間の無駄に強いストレスを感じるタイプだからだ。

回り道。
二度手間。
考えれば防げたミス。

これを見続けるのが、正直耐えられない。


③ これは性格ではなく「特性」の問題

これは良し悪しの話じゃない。
特性の話だと思っている。

自分は
・仕組みを考える
・最短ルートを設計する
・ムダを削る

ここには強い快感を感じる。

一方で、
・同じ説明を何度もする
・感情に配慮しながら注意する
・遠回りを許容する

この領域では、
感情が先に出やすい。

行動心理学で言えば、
これは 認知的不協和 に近い。

「もっと良くできるのに」
「時間を大切にしたいのに」

その思いと現実がズレた時、
人は怒りとして反応しやすい。


④ だから「言葉」は右腕に任せる

そこで、自分は役割を分けた。

・決めるのは自分
・線を引くのも自分
・責任を取るのも自分

ただし、
伝える役割は右腕に任せる。

自分の判断基準や意図を共有し、
伝え方は、適任者に任せる。

これは逃げではない。
組織を壊さないための戦略だ。


⑤ 孫子兵法が戒める「感情で動く将」

孫子兵法に、こうある。

忿を以て師を興すべからず
慍を以て戦うべからず

怒りや苛立ちで、
軍を動かすな、という意味だ。

これは戦争の話だが、
経営でも全く同じ。

トップが感情のまま前に出ると、
組織は混乱する。

将(トップ)は、
戦場に立つより
全体を崩さないことを優先すべき場面がある。


⑥ ランチェスター戦略で見る「嫌われ役」

ランチェスター戦略では、
弱者が一番やってはいけないのは
役割の集中と分散を間違えること

人も資本も限られている側が、
判断も作業も感情処理も全部やり始めたら、
戦場が一気に広がる。

弱者の定石はこれだ。

・判断は集約
・役割は分業
・責任は明確

嫌われ役を
「自分が全部背負う」必要はない。

引き受けるのは役割であって、言葉ではない。


⑦ 嫌われ役は「性格」ではなく「仕事」

大事なのはここ。

嫌われ役は、
性格でも人間性でもない。
仕事だ。

代表取締役だからやる。
経営者だから引き受ける。

そして、
どうやってやるかは戦略で決めればいい。


まとめ

嫌われ役を避ける経営は、
必ずどこかで破綻する。

ただし、
嫌われ役を
感情のまま引き受ける必要はない。

孫子兵法で言えば、感情を戒めよ。
ランチェスターで言えば、役割分担。
行動心理学で言えば、特性の自覚。

決めるのは自分。
責任を取るのも自分。
伝え方は、適任者に任せる。

それが、
自分の特性を活かし、
組織を守る一番のやり方だと思っている。

自分はそう思う。

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