第21回 なぜ忙しい経営者ほど判断を間違えるのか
―― 孫子「虚実篇」と行動心理学で見る“詰む構造” ――
忙しい。
時間がない。
考える余裕がない。
経営をしていると、
この状態が「普通」になっていく。
でも、
経営において忙しさは努力の証明ではない。
むしろ、かなり危険なサインだと思っている。
① 忙しい状態は「戦っている」状態
孫子兵法に、こうある。
彼をして忙しからしめ
我は暇ならしむ
意味はこうだ。
相手を忙しくさせ、
自分は余裕を持て。
これが、戦いの基本。
逆に言えば、
忙しい状態に追い込まれている時点で、
すでに主導権を失っている。
経営でも同じ。
忙しい経営者は、
戦場に引きずり出されている。
② 忙しさは「能力不足」ではなく構造
ここを勘違いしやすい。
忙しいのは、
能力が低いからでも
努力が足りないからでもない。
構造の問題だ。
・全部自分でやる
・判断も作業も一緒
・止まって考える時間がない
この構造に入ると、
どんなに優秀でも忙しくなる。
③ 行動心理学:判断疲れという罠
行動心理学では、
これを 判断疲れ(decision fatigue) と呼ぶ。
人は
判断を重ねるほど
意思決定の質が落ちる。
忙しい経営者は、
・作業しながら判断
・怒りながら判断
・疲れた状態で判断
これを毎日繰り返す。
その結果、
・短期的な判断が増える
・保守的になる
・現状維持を選びやすくなる
つまり、
攻めの判断が消える。
④ 孫子「虚実篇」が示す本質
孫子はこう続ける。
我は専らにして
敵は分かる
こちらは集中し、
相手は分散させる。
忙しい経営者は真逆だ。
自分が分散し、
問題が集中してくる。
作業
判断
感情処理
全部を同時に抱える。
これは戦略的に最悪。
⑤ ランチェスター戦略で見る「忙しさ」
ランチェスター戦略では、
弱者がやってはいけないのが
戦場の拡大。
忙しい=
自分が戦場を広げている状態。
弱者の定石は、
・一点集中
・局地戦
・判断の集約
経営者が忙しいのは、
集中点を見失っている証拠だ。
⑥ 忙しさが奪うもの
忙しくなると、
真っ先に消えるものがある。
・観察
・余白
・違和感
人の変化に気づけない。
小さなミスを見逃す。
仕組みの歪みに気づかない。
結果、
問題は後で大きく爆発する。
⑦ 忙しい経営者がやるべきこと
忙しい時に、
さらに頑張る必要はない。
やるべきは、逆。
・止まる
・切る
・任せる
・考える
忙しい時ほど、
現場から一歩引く。
それが、
主導権を取り戻す唯一の方法だ。
まとめ
忙しさは、美徳じゃない。
努力の証明でもない。
孫子兵法で言えば、
虚を作れず実に縛られている状態。
ランチェスターで言えば、
戦場を広げすぎている状態。
行動心理学で言えば、
判断疲れに陥っている状態。
忙しい経営者ほど、
判断を間違える。
だからこそ、
経営者は意図的に暇を作る。
考えるために。
見るために。
決めるために。
自分はそう思う。

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