第7回 価値と価格は同じじゃない──

産直と市場の価格差に悩む農家が感じる「価値と価格のギャップ」を象徴するイメージ

野菜の値段は“見えている数字”と“作り手が感じる価値”が必ずしも一致しません。農家の手取りは売り先が変わっても大きくは変わらず、店頭の価格だけが勝手に動くこともあります。今回のテーマは、価値と価格の乖離、産直で起きる値崩れの構造、そしてコロン’sファームが作物の9割を自社の無人販売所で売る理由について。

農家の手取り、産直の構造、そして納得の話

野菜の値段ほど、不思議なものはない。

同じものでも
売り場によって値段が違う。
同じ農家でも
売り方によって手取りが変わらないこともある。

そしてなにより――
作り手が感じる 価値 と、売り場がつける 価格 がズレる瞬間がある。

今回は、その話。

目次

■ 農家の手取りは「どこに出しても大きく変わらない」という現実

直売所に出しても、
スーパーに卸しても、
市場に出しても、

農家の手元に残る額はほぼ変わらない。

これは良し悪しではなく、
ただの 仕組み の問題。

流通には
運搬、選別、陳列、人件費、管理費……
見えないコストが積み重なる。

だから、
売り場の価格は大きく動くのに、農家の手取りはほぼ一定。

ここに、独特の 怖さ がある。

■ 880円のシャインマスカットが教えてくれたこと

先日、大型スーパーで
色の悪い黄色いシャインマスカットを見た。

熟して黄色いのではなく、
誰でもひと目で分かる 失敗した色。

値段は 880円。

味は分からない。
もしかしたら美味しいかもしれない。

でも農家目線では、引き取ってもらえるなら
「100円でも200円でも、ありがたい」というレベルの品に見えた。

ここで怖いのは、
失敗作 が高値で売られていることではなく、

作った農家の手取りは、
そこに並んだ880円とは関係ない という事実。

つまり――

価値(農家の感覚)と
価格(売り場の数字)が、
完全に乖離する瞬間がある。

これがいちばんしんどい。

私なら、こう思う。

「これは880円じゃない。
食べたいなら家においで。タダでどうぞ。」

売れたらありがたいのが本音。
でも、胸を張れないものが高値で売られるのは苦しい。

■ 産直は「値崩れの現場」でもあり「救済の場」でもある

産直の値段がカオスなのは、理由がある。

産直は
“出す人間が自由に価格を決める” という場。

だから出てくるのは、

✔ プロ農家
✔ 家庭菜園の延長の人
✔ 「いっぱいできたから持ってきた」おじいちゃん
✔ とりあえず売ってみたい人

全部が混在している。

よく聞くのがプロ農家の悲鳴。

「年寄りが値段をめちゃくちゃ下げて売るから迷惑」

これ、本当にその通りで、よく分かる。

・生活はかかっていない
・安くすれば“喜んでもらえる”
・お小遣いになれば嬉しい
・大量にできたから処分兼ねて

その気持ちも純粋で、間違ってはいない。

ただ一方で、
生計を立てるプロ農家からすれば、
50円や100円の“投げ売り”に勝てるわけがない。

そして忘れられがちだが、
産直という仕組みはそもそも

市場に出せず捨てられていた野菜を救うため

に生まれた。

だから、本来の理念からすれば
「品質に幅がある」のは間違いではない。

見た目は悪いけど新鮮でおいしくて安い!

これはどこに行ったのだろう、と少し疑問に思う。

■ コロン’sファームが作った野菜の「9割を無人販売所で売る」理由

価値と価格の話をするとき、
私がどこで売るかは避けて通れない。

私は、作った野菜の9割を
自分たちの無人販売所 で売っている。

理由はシンプル。
納得できる形で売れるから。

産直やスーパーに出したときの手取りと、
無人販売所で売ったときの手取りは大差ない。

ならば――
私が納得できる環境で売る方がいい。

■ 「安くておいしい」と言われる理由は、魔法でも企業秘密でもない

「コロンさんの野菜は安くておいしい」
そう言われたことが何度もある。

近隣の農家からは
「そんな値段でやっていけるん?」
と聞かれることもある。

答えは単純。

販売手数料がないだけ。

産直にもスーパーにも、
手数料・維持費・ラベル代・リスクがつく。

無人販売にはそれがない。

ただそれだけ。

■ 産直には「広告費」として出している

とはいえ、産直にまったく出さないわけではない。

出すときは、
必ず「コロン」のロゴシールを貼っている。

理由はひとつ。

販売ではなく“プロモーション”と割り切っているから。

産直の集客力はすごい。
知名度も桁違い。

手数料を
“消える経費”として見るのはしんどい。
でも
“広告費”と割り切ると、存在が変わる。

実際、

「産直で見て気になって、無人販売所に行ってみた」

というお客さんが本当に増えている。

■ 結論:価値は「売り場」ではなく「納得」で決まる

農家の手取りはどこに売ってもほぼ同じ。
価格は売り場が勝手につける。
価値はお客さんが感じる。

その狭間で揺れるのは、
農家が持つ 自分自身の価値観 。

だから私は、
値段に合わせて価値を盛るのではなく、
価値に合わせて売り方を選ぶ。

それが、
コロン’sファームが 9割を自分の売り場で売る 理由。

そして、

数字ではなく 納得 で届ける農業がしたい。

それが私の答え。

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