第17回 自分を知ることは 甘えじゃない

自己分析と仕組み化を考える農業経営者 性格と向き不向きから続ける働き方を設計する机上の風景
目次

性格と向き不向きから考える 続けるための農業設計

農業を続ける上で一番大事なのは、
技術でも、根性でも、覚悟でもない。

自分をどれだけ分かっているか。
ここだと思っている。


① 続かなくなる理由は 能力不足じゃない

多くの人は、
できなかったから
向いていなかったから
続かなかった
と思いがちだ。

でも実際は違う。

続かなくなる理由のほとんどは、
性格と作業が噛み合っていないだけ。

単純作業が苦手なのに
毎日同じ作業が続く作型を選ぶ。

細かい管理が苦手なのに
管理項目だらけの工程を抱える。

人と話すのは得意なのに
一人で黙々とやる作業ばかり増やす。

これを根性で埋めようとすると、
どこかで必ず歪む。


② 自己分析は 逃げじゃない

自己分析は、正直言って死ぬほどやった。
工夫もしたし、試行錯誤も散々してきた。

だから
やらない という選択は
あきらめでも、逃げでもない。

むしろ逆だ。


③ 率先してやることを 美としている

どの仕事でも
率先してやる。
誰よりも早くやる。

それを美だと思っている。

嫌な作業ほど後回しにせず、
前向きに取り組む。
逃げない。避けない。

だからこそ、
ストレス比重が大きい作業ほど、

どうすれば最短で
どうすれば楽に
どうすれば楽しくできるか

を本気で考える。


④ ストレスは 排除対象じゃなく 改善対象

ストレスがあるから やらない のではない。
ストレスがあるから 仕組みに落とす。

毎回疲れる
毎回イライラする
毎回集中力が切れる

そう感じた時点で、
それは気合いで続ける仕事ではない。

改善対象だ。


⑤ ルーティンが苦手でも 農業はできる

正直に言うと、
自分はルーティンが死ぬほど苦手だ。

同じ場所で
決まった作業を
決まった順番で

これが本当に苦痛で、
ストレスがハンパない。

農業にとっては、
致命傷になり得る特性だと思う。

だから
無理に克服しようとはしない。
仕組みでカバーする前提で設計している。


⑥ 得意な人に任せるのは 全然あり

ここに バイト を入れるのも一考。
得意な人にやってもらうのは、甘えでも逃げでもない。

バイトを入れる というと大ごとに聞こえるかもしれないが、
週に数時間 決まった作業だけ でもいい。
それだけで 判断疲れ が劇的に減ることがある。
これは人件費ではなく、自分のパフォーマンスを維持するための必要経費だと思っている。

苦手を我慢して続けるより、
得意を伸ばして全体最適を作る方が、強い。


⑦ 致命傷は 仕組みでカバーできる

弱点を無かったことにしない。
暴れない形に作り替える。

チェックリスト化して迷いを減らす
工程を削ってルーティン量を減らす
ルーティン部分はバイトに寄せる
機械で置き換える
予定を固定して考える回数を減らす

例えば、工程を削るなら
毎回量るのをやめて 決まった容器のすり切り一杯 にするだけでもいい。
予定を固定するなら
火曜日の午前中は必ず防除 と決めて 考える時間をなくす だけでもいい。

根性で続けるより、
仕組みで続ける方が、よほど強い。


⑧ 兵法と戦略と心理学で言うと こういう話

ここからは、同じ話を別の言語で言い直す。
自分はこういう裏付けがある方が腹落ちする。

1 孫子兵法 まずは勝ち方を決めてから戦う

孫子にはこうある。

勝兵は先ず勝ちて而る後に戦う

意味は、勝てる形を作ってから戦うということ。
農業で言えば、気合いで頑張ってから考えるのではなく、
続けられる形 つまり自分の特性に合う形を先に作る。

ルーティンが苦手なのに、ルーティンだらけの現場を組む。
これは最初から負け筋を踏んでいる。
勝ち筋を作るとは、苦手が暴れない設計にしてから走ること。

もう一つ、孫子の有名な一節。

戦わずして人の兵を屈するは 善の善なる者なり

戦わないは逃げではなく、最上の勝ち方。
自分の苦手と戦って消耗するくらいなら、
戦わない形 つまり仕組み化や役割分担で回す方が強い。

2 ランチェスター戦略 弱者は一点集中と局地戦

ランチェスターは雑に言うとこれ。

弱者は、
広く薄く戦わず、勝てる一点に集中する。
強者と同じ土俵に乗らない。

これを自己理解に当てると、
自分の得意に一点集中して、苦手は戦場から外す。
苦手を克服するより、苦手が影響しない配置にする。

得意なことに全力を注げる環境を作る。
これは戦略そのものだ。

3 行動心理学 認知負荷と判断疲れが人を壊す

行動心理学では、人は意思が弱いから崩れるのではなく、
仕組みが悪いから崩れると見る。

ポイントはこの2つ。

認知負荷 選ぶこと 考えること が多いほど疲れる
判断疲れ 決断の回数が増えるほど、判断が雑になる

農業は毎日例外が起きる。
だから意識して減らさないと、
判断回数が増えすぎて心が削れる。

だから
予定を固定する
チェックリスト化する
工程を減らす
バイトに寄せる
機械で置き換える

こういう設計が効く。
これは気持ちの問題ではなく、人間の仕様の話だと思っている。


参考 自分の特性整理 メリット デメリット

メリット

  • 仕組み作りが得意 ゼロから形にする 立ち上げが強い
  • 課題発見が早い 詰まりを見抜くのが速い
  • 改善思考が強い ストレス作業ほど最短ルートを考える
  • 嫌な作業ほど前倒しで片付けられる
  • 投資判断ができる 機械や環境に投資して時間を買える
  • 戦略思考が強い 比較されない戦場を選べる
  • 学習と吸収が速い 試して修正するスピードが早い
  • 言語化が得意 思想と実務を文章に落とせる
  • 長期視点で信用を重視できる
  • 意思決定と責任を引き受けられる

デメリット

  • ルーティン作業が極端に苦手 同じ作業の反復が強ストレス
  • 毎日の細かい記録や定常作業で消耗しやすい
  • 単純作業を長時間続けると集中力が落ちる
  • 割り込みが多いと判断疲れを起こしやすい
  • 真面目に前倒しする分 反動で一気に疲れが出る
  • 仕組みが未完成な段階では不安定になりやすい
  • 苦手作業を自分で抱えるとストレスが跳ね上がる
  • 空気を読みすぎて疲弊する場面がある
  • 例外対応が続くと消耗が加速する

補足

だから自分は、
得意なことに全力を注げる環境を作っている。

苦手な作業は
仕組み
機械
役割分担
で薄める。

得意な人に任せる。
バイトを入れる。

それは甘えではなく、
長く続けるための経営設計だと思っている。


まとめ

自分を知ることは、甘えじゃない。
長く続けるための、立派な判断だ。

あなたの性格は変えなくていい。
変えるのは、仕事のやり方 仕組み だけでいい。

孫子で言うなら 勝ってから戦う。
ランチェスターで言うなら 一点集中。
行動心理学で言うなら 判断疲れを減らす設計。

そうやって作った仕事は、
ちゃんと続く。

自分はそう思う。

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