第13回|就農初期は「失敗を山盛りする」くらいでちょうどいい

畑の中で汚れた手でノートに書き込みをする農家。失敗の記録と次の対処を整理し、就農初期に経験値を積み重ねていく姿を表している。
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第13回|就農初期は「失敗を山盛りする」くらいでちょうどいい

就農したばかりの頃、誰もが思う。
「できるだけ失敗したくない」
「最初から正解を選びたい」

でも正直に言うと、
就農初期にそれをやろうとすると、だいたい詰む。

なぜなら、その時点では
判断するための材料が、圧倒的に足りないからだ。


■ 下手で当たり前。それは能力じゃなく段階の問題

就農初期にうまくいかないのは、才能がないからじゃない。
単純に、その土地・その条件での経験値がないだけ

農業は、

  • 土が違う
  • 水が違う
  • 風が違う
  • 圃場ごとにクセが違う

頭で理解していても、
実際にやってみないと分からないことだらけだ。

だから最初は下手で当たり前。
ここで必要なのは、
うまくやることより、やることだ。


■ 就農初期は「経営」じゃない。「探索」だ

よく、戦略論やマーケティングの文脈では
「無駄な失敗を減らせ」「効率を上げろ」と言われる。

これは間違っていない。
ただし、それは安定してからの話だ。

就農初期は、まだ戦う場所すら分かっていない。
この段階でやるべきことは、最適化ではなく探索

・この土地で何が育つか
・どれが売れるか
・どこで一番削れるか
・自分は何が苦じゃないか

これを、実際にやりながら確かめる時期だ。


■ だから「失敗上等」は、逆行じゃない

私の場合、就農初期の合言葉はこれだった。

失敗上等。

空きが出ればすぐ別のものを植えた。
手当たり次第、節操なくやった。
成功事例を積むというより、
失敗を山盛りにするつもりで動いていた

一見すると、
行動心理学や戦略論と逆行しているように見えるかもしれない。

でも実際は、その逆だ。


■ 失敗は「最短で学習を進める装置」になる

行動心理学では、
人は成功よりも失敗の方を強く記憶するとされている。

特に、

  • どこで損をしたか
  • どこで詰まったか
  • 何が足りなかったか

こうした“痛み”を伴う経験は、
次の判断に強く影響する。

満身創痍で完了した仕事ほど、
「次はここが危険だ」という感覚が体に残る。

だから私は、
失敗を避けるより、
失敗して学習する速度を上げる方を選んだ。


■ 戦略論的には、これは「偵察」フェーズ

孫子兵法の視点で見れば、
就農初期の失敗は無謀な突撃ではない。

偵察だ。

・どこが地雷か
・どこで負けるか
・どこなら戦えるか

これを体で確かめているだけ。

ランチェスターで言えば、
弱者が最初にやるべきは効率化じゃない。
試行回数で情報差を埋めることだ。

だから就農初期の非効率は、
あとで効いてくる前提の投資になる。


■ 「失敗しないように」は正しい。でも伸びにくい

指導する側の人たちが
「失敗しないようにやろう」と言うのは正しい。

立場上、そう言うしかない。

でもそれは、
平均点を下回らせないための助言だ。

一方で本当に伸びるのは、
失敗してからもらうアドバイスだと思っている。

失敗しているから、

  • 何が分からないか分かる
  • どこを聞けばいいか分かる
  • アドバイスの取捨選択ができる

同じ言葉でも、刺さり方がまるで違う。


■ 就農初期の多品目は「探索のための分散」

小規模農家が就農初期に多品目に行くのは、逃げじゃない。
探索だ。

問題になるのは、
不安から増え続ける「目的のない多品目」。

探索としての多品目は、
むしろ合理的だと思っている。


■ 就農初期の正解は「死なないこと」

就農初期に、たった一つだけ正解があるとすればこれ。

死なないこと。

・資金が尽きない
・体を壊さない
・信用を失わない
・続けられる状態を保つ

勝ちに行くのは、その後でいい。


■ まとめ

就農初期は、
うまくやる時期じゃない。
学習を最大化する時期だ。

失敗上等。
節操なくやっていい。

満身創痍でも完了すれば、
次にどうすれば危険かは必ず分かる。

それは、
あとになって必ず効いてくる。

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