第15回|儲けたいのに安売りしてしまう理由

電卓で価格を計算する農家の手元 安売りに気づかず価格設計を考える弱者の経営判断

気づかない安売りから抜け出す弱者の戦略

① 近所の農家さんの よくある話

近所に 産直に出している農家さんがいる。
市場出荷はしておらず 価格は自分で決めている。

その人は 儲けはいらない というタイプではない。
将来の不安もあるし 農業で手元を厚くしたい気持ちも ちゃんとある。
本当は 儲けたいと思っている。

それでも価格は 無意識に 他より少し安く。
理由はシンプルで
高いと買いにくいだろうから
喜んでもらいたいから。

値段を聞いていて 正直に思うのは
それ 本業ではあまり利益が残っていないのでは ということだ。


② 一番もったいないのは 本業じゃない小銭稼ぎに流れること

本業で利益が取り切れていないと
人はどうしても 穴埋め を探し始める。

短期で現金になりそうなこと
手間の割に小銭が入ること
本業とは関係の薄い副収入

もちろん それ自体が悪いわけではない。
ただ 本音が 農業で儲けたい なら 順番が逆になる。

本業の価格設計がズレたまま
小銭稼ぎに時間と体力を使ってしまう。
これが 一番もったいない。


③ 問題は 安く売っていること ではない

この話で言いたいのは
そのやり方を否定したいわけではない ということ。

経営方針は人それぞれで
外から口を出す話でもない。

ただ一つ 構造として気になる点がある。
それは
自分で価格を決められる立場にありながら
無意識に 他より安く を基準にしてしまっていることだ。

市場に出していない以上
相場に縛られる必要はない。
それでも 比較軸を 他人 に置いた瞬間
気づかない安売りが始まる。


④ まず前提として ウチは弱者である

ここで立場をはっきりさせておきたい。
ウチは いわゆる強者ではない。

市場の価格を決めているのは 大手水準。
そこに乗っかる時点で
生産規模 資本 人財 設備
あらゆる面で 劣った側になる。

理想だけを持って 正面から仕掛ければ
最後は体力勝負になり ほぼ確実に負ける。
これは能力の問題ではなく 構造の問題だ。


⑤ 安い は 善でも悪でもない

安く売ること自体に 善悪はない。

問題になるのは
なぜその価格が成立しているのかを説明できるかどうか。

手間も時間もコストも変わらないまま
自分の収益を削って安く売る。
これは 経営ではなく 消耗戦になる。

一方で
構造を変え 無駄を削った結果として
価格が下がっているのであれば
それは立派な戦略だ。

同じ安さでも 中身はまったく違う。


⑥ 孫子兵法が説く 最上の勝ち方

百戦百勝は 善の善なる者に非ざるなり
戦わずして人の兵を屈するは 善の善なる者なり

相手をボロボロにして奪っても
復興させるコストは 勝った側が背負う。

価格を壊して勝てば
荒れた市場で商売を続けるのは 自分自身になる。

無血開城とは
壊さずに 疲弊せずに 選ばれることだ。


⑦ ランチェスター戦略は 弱者の現実論

ランチェスター戦略の基本は明快だ。
弱者は 強者と同じ土俵で戦ってはならない。

量 価格 安定供給
これらはすべて 強者が有利な領域。

弱者が取るべきなのは
勝とうとすることではなく
戦わない場所を選ぶこと。

比較されない設計
消耗しない売り方
体力を削らない価格。

これが 弱者の正攻法だ。


⑧ 結論 一番怖いのは 気づかない安売り

安く売ることが問題なのではない。
安くしていることに気づいていないことが問題になる。

本当は儲けたいのに
本業で取り切れず
別の小銭稼ぎに時間を使ってしまう。

それなら先に
本業の価格設計と 戦場を見直した方がいい。

覚悟ではなく 設計。
根性ではなく 戦略。

続けられる形で 喜ばれること。
それができて はじめて 勝っていると言える。

自分はそう思う。

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