第12回|「忙しい」を言い訳にする人と、そうでない人の差

農作業の合間に机でノートを開き、段取りや戦略を考える農家の手元。忙しさを言い訳にせず、判断と設計に向き合う姿勢を表している。
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「忙しい」を言い訳にする人と、そうでない人の差

農業をしていると、よく耳にする言葉がある。
「今は忙しいから」
「忙しくて考える時間がない」

正直に言う。
私はこの「忙しい」という言葉を、徹底して使わない。

なぜなら、
頭の中が整理できていない状態をさらしている気がするからだ。

忙しいこと自体が悪いわけではない。
ただ、この言葉は使い方を間違えると、
一気に“思考停止のサイン”になる。


■ 忙しさの正体は「作業量」ではなく「判断の多さ」

まず整理しておきたい。
忙しい=仕事量が多い、ではない。

本当の正体は、
判断しなければならない回数が多すぎる状態だ。

・今日はどの圃場から回るか
・この作業は今か、後か
・防除する?見送る?
・どの資材を使う?

こうした小さな判断を、1日中ずっと繰り返している。

心理学ではこれを
**意思決定疲労(Decision Fatigue)**と呼ぶ。

人は判断を重ねるほど、
判断の質が落ち、ミスが増え、動きが鈍くなる。

つまり、
忙しい → 判断が増える → 精度が落ちる → さらに忙しくなる
という負のループに入りやすい。


■ 忙しい人ほど、戦う場所を間違えやすい

ここでランチェスター戦略の話を少し。

ランチェスターで言う「弱者」とは、
規模が小さい、資源が限られている側のことだ。

弱者の基本戦略は、
一点集中

ところが忙しさを感じている時ほど、人は逆の行動を取る。

・品目を増やす
・作業を広げる
・全部を平均点でこなそうとする

これは安心感はあるが、戦略としてはかなり苦しい。
リソースが薄く広がり、判断が増え、管理が破綻しやすくなる。

ランチェスター的に見れば、
強者の戦い方を、弱者が無理に真似している状態だ。


■ 孫子兵法で言えば「実を叩いている」

孫子兵法には、こんな考え方がある。

勝てる場所で戦え
勝ちにくい場所では戦うな

忙しいと感じている時、多くの場合、
自分が一番消耗する場所=**実(じつ)**を叩いている。

・人手が足りない
・時間がない
・余裕がない

分かっているのに、
そこから逃げずに正面突破しようとしてしまう。

それは勇敢かもしれないが、
賢い戦い方とは言いにくい。


■ 「暇です」と答えるのは、ハッタリでいい

私は、どれだけ詰まっていても、こう答える。
「暇ですから」

もちろん、本当に暇なわけがない。
正直、疲れている日もあるし、
頭が回らず後悔することもある。

でも、この一言には意味がある。

ハッタリでいいと思っている。
バカにされたくないから努力するし、
引き受けた以上は、満身創痍でも完了させる。

そうやって最後までやり切ると、
「どこが一番危険だったか」がはっきり分かる。

次は、そこに対処を入れればいい。
段取りを変える。
仕組みに任せる。
やらない判断を入れる。

この繰り返しでしか、
本当の意味で楽にはならない。


■ 忙しさを楽しんでいる人は、例外なく「設計者」

ここで誤解してほしくない。

私は、忙しい人を否定しているわけではない。
むしろ、心から尊敬している忙しい農家もいる。

彼らに共通しているのは、

・段取りが下手ではない
・忙しさを嘆かない
・その環境を自分で選んでいる
・楽しんでいるのが外から見ても分かる

この人たちは例外なく、
作業者ではなく、設計者だ。

同じ忙しさでも、
言い訳に使うか、学習に使うかで、
見える景色はまったく変わる。


■ まとめ

忙しいこと自体が問題なのではない。
問題なのは、忙しさを思考停止の言い訳にすることだ。

心理学的には、判断過多。
ランチェスター的には、分散。
孫子兵法的には、戦う場所のミス。

ハッタリで引き受けてもいい。
満身創痍でも構わない。
大事なのは、結果を良しに着地させ、
次に同じ危険を踏まないこと。

引き受けてから考える。
段取りを組む。
上手くいったら、素直に楽しむ。

それが、
私が選んで続けているやり方だ。

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