第7回|家庭菜園以上・プロ未満が増えすぎた違和感。——“今は耕作、でも未来は空く”という現実
農業という言葉は、あたたかい。
「土に触れる」「自然の中で暮らす」
そんな響きは、聞くだけで心が整う気がする。
でも現場で経営を回していると、
どうしても拭えない違和感があるんよね。
それは——
家庭菜園以上・プロ未満の層が、急激に増えすぎていること。
一見、農地に人が入るから良さそうに見える。
けど、この流れは“今だけ”で終わる可能性が高い。
今日はその話を、静かに書いてみる。
■ 1. 半農半Xが悪いんじゃない。問題は「生活できない前提」が黙認されてること
半農半Xという形そのものを、否定したいわけじゃない。
問題は、
**生活できないレベルの農業が“制度として成立してしまっている”**こと。
実際、就農のときに役所から
「最初は食えなくても仕方ない」「半農半Xで様子を見たら」
って言われた人、少なくないと思う。
でも、その先に起きる現象はだいたい同じ。
- 農業単体では赤字
- 本業に時間も体力も持っていかれる
- 農地管理がじわじわ甘くなる
そして数年後、
また空き農地になる。
今は耕作されてても、未来の解決にはなってへん。
■ 2. 農家台帳に載るってことは、「農地を守る責任」がセットで付いてくる
ここ、あまり語られへんけど大事なポイント。
農業委員会の農家台帳に載るということは、
単に「農業を始めました」ではなくて、
農地を守る側に回りました
という宣言に近い。
荒廃した土地を耕作する。
これは確かにスタートとして価値がある。
でも本当に問われるのは、その先。
- その土地を“続けて守れる設計”になっているか
- 自分が辞めたとき、農地はどうなるのか
ここまで考えて初めて、農地を預かる側の責任が果たせる。
「自分がやって完結」では、結局また荒れる。
それは地域にとっても、次の世代にとっても、しんどい。
■ 3. 引き際まで設計する。バイアウトも“賢い選択肢”にしておく
農業は、始めることよりも、
辞める判断のほうが難しい仕事やと思う。
だからこそ最初から考えておきたい。
- いつまで自分が現場に立つのか
- 誰にどう渡すのか
- 自分が抜けたあとも回る形になっているのか
そして現実的に言えば、
『バイアウト(事業として買ってもらう)』っていうのも、めちゃくちゃ賢い選択。
「最後まで自分が背負い続ける」が美徳みたいな空気もあるけど、
続く形を作れるなら、出口を複数持つほうが強い。
ただ、ここで避けて通れない話がある。
とりあえず、デカくならなきゃどうしようもない。
規模=正義、って単純な話じゃない。
けど、
- 人に任せられる
- 収益が残る
- 次の人が入りやすい
こういう“引き継げる事業体”にするには、
ある程度の売上と余力が必要になる。
「今はそれなりに生活できてるから大丈夫」
という人もいる。
でも、次の代は本音ではそうでもないかもしれない。
自分の体力・経験・我慢で成り立っている経営は、
次の人にとっては“継げない”ことがある。
だからこそ、
元気なうちに、
次の代が継ぎたくなる形に整える。
そして最悪、自分が引いたあとも荒れないように、出口まで設計する。
その視点がない農業は、たぶん最後に苦しくなる。
■ 4. 「日本一稼いで、日本一休む」——そのために、引き継ぎたいと思われる企業を作る
うちでは、ずっと掲げている言葉がある。
「日本一稼いで、日本一休む」
正直、簡単な話でもないし、大風呂敷やとも思う。
でもこれは、楽をしたいという意味じゃない。
農業を“続けられる仕事”にするための、かなり現実的な目標やと思ってる。
農業は、頑張れば頑張るほど身体を削る。
休めない仕組みのままでは、いずれ誰かが無理をする。
だからこそ、逃げずに「稼ぐ」を前提にする。
十分に稼げれば、
- 人に任せられる
- 休める
- 引き継げる
- 辞める自由も持てる
つまり、休むために稼ぐという考え方。
この視点がない農業は、
やさしく見えて、実は一番しんどい。
幸い、息子は「継ぎたい」と言ってくれている。
でも、私はこう伝えている。
今はそう思ってても、気が変わるかもしれない。
奥さんが嫌がるかもしれない。
だから、やりたければやればいい。
辞めたくなったら、辞めればいい。
無理に継がせて続く経営は、たぶん歪む。
だから目指しているのは、
身内だから継ぐ企業じゃなく、継ぎたいと思われる企業。
それが息子でもいいし、
違う誰かでもいい。
お客さんに愛され、
地域に必要とされ、
経営として成立している。
そんな形まで育てて、
自分が引いたあとも荒れないようにしておく。
それが、農地を預かる側としての責任やと思ってる。
■〖まとめ〗
半農半Xが悪いわけじゃない。
でも、生活できない前提の農業が横行すると、
空き農地→とりあえず就農→また空き農地の負のループが止まらない。
農業を未来に残すなら、
- 稼ぐ前提で始める
- 子どもが継げる形にする
- 引き際と出口戦略を最初から持つ
ここを外したら、たぶん大変になる。
今が元気だからこそ、
“続け方”と同じくらい“終わり方・渡し方”も設計しておきたい。
私はそう思っています。
※個人を責めたいのではなく、農地が未来に残る仕組みの話をしています。

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