再起不能になるまで頑張るな──
綺麗にこける準備が、農業と人生を救う
農業は、「頑張ればなんとかなる」世界ではありません。
体力でも、根性でも、気合でも突破できない。
結論はこれだけです。
■ 再起不能になるまで頑張るな。
■ そして、綺麗にこけろ。
農業は HP(現金)とメンタルの管理がすべて。
どちらかがゼロになった瞬間、ゲームは止まります。
■ ① 農業は“HPゼロ”になった瞬間に強制終了する

農業は、毎日少しずつHPが削られていく仕事です。
・天候の乱高下
・獣害
・病害虫
・作物の不調
・機械の故障
・資材費の高騰
・地域との調整
ひとつ噛み合わないだけで、
体力・気力・現金が一気に持っていかれる。
そして現実はこうなります。
■ HPゼロ=作付が止まる
■ HPゼロ=資材も買えない
■ HPゼロ=メンタルも折れる
だから私は断言します。
「根性で乗り切る」は最大の間違い。
無理だと思ったら“止まる勇気”の方が正解です。
■ ② 潰れる農家の共通点は「自分を守らないこと」

失敗した農家は驚くほど同じパターンです。
■ 折れる直前まで気づかない
■ 限界を限界と認めない
■ HP赤ゲージのまま突っ込む
そして気づいたときには、
・現金が尽き
・体が動かなくなり
・気力が消え
・家庭も崩れ
完全に“戻れないライン”を越えている。
農業は、
死なない戦い方を選んだ人だけが生き残る産業です。
■ ③ 折れたことは“負け”ではない。むしろ成長の入口

ここは誤解してはいけない部分です。
■ 一度折れた人間の方が、本当に強い。
折れた経験がある人は、
「どこでHPが尽きたか」を理解している。
・資金繰りの甘さ
・段取りの穴
・背伸びのしすぎ
・投資のタイミング
・仕組み化の不足
・体調管理の軽視
これらを一度痛みで学んだ人間は、
次の挑戦では“無駄がゼロ”になる。
折れた経験は、
次の挑戦のための “設計図” になる。
■ ④ 過剰投資・無謀な借金は“綺麗にこける力”を奪う

農業のつまずきは、前触れなく来ます。
・大雨
・干ばつ
・害獣
・病気
・家庭の事情
・体調不良
・機械故障
つまずくときは、本当に突然。
だからこそ、
■ 過剰投資
■ 無謀な借金
■ 固定費の重さ
■ 逃げ道のない計画
これは全部、
“汚いこけ方”につながる。
汚くこけると、
本当に立ち上がれないことがある。
家族も巻き込む。
周りにも迷惑がかかる。
だから私はこう言いたい。
綺麗にこける準備をしておけ。
それが経営者の仕事であり、本質だ。
■ ⑤ 日本では「筋を通す人間」が必ず助けられる

これは現場を知っているから言えることです。
農業で失敗しても、
筋を通してきた人間は絶対に見捨てられない。
・税金を払っていた
・融資を誠実に返していた
・逃げない
・嘘をつかない
・挨拶を欠かさない
・地域と丁寧に付き合う
こういう人は、
役場、公庫、JA、金融機関、誰かが必ず手を差し伸べる。
だから私は断言します。
折れてもいい。
ただし“筋”だけは絶対に通しましょ。
そこさえ守れば、
復活の道は必ず残されている。
■ ⑥ 綺麗にこけた人間は、戻ってきた時にとてつもなく強い

一度折れた人は、
復活すると姿が変わります。
・投資の優先順位が明確
・HP管理が慎重
・信用(MP)を何より大切にする
・段取りが洗練
・背伸びのリスクを把握
・“引き算の経営”ができる
・冷静な意思決定ができる
これは、折れた人間だけが得られる強さです。
続いている農家はほぼ全員、一度は折れている。
折れるのは恥ではなく“成長の証”。
■ 第10話まとめ
・再起不能になるまで頑張るな
・HPゼロは即ゲームオーバー
・農業は「死なない戦い方」が最強
・折れた経験は成長の設計図
・過剰投資・重い借金は“汚いこけ方”
・筋を通すことで必ず復活できる
・綺麗にこけた人間は誰より強い
農業で最も大切なのは、
倒れないことではなく、
倒れても立ち上がれる“こけ方”を選ぶこと。
■ 次回予告(第11話)
土地に逆らうな。
作れる作物は“場所”で決まる。
