【第4回】農家が教える保存の知恵 さつまいも編

秋の畑を背景に、柴犬のマスコットとさつまいもが並ぶ「農家が教える保存の知恵(第4回)さつまいも編」の画像

大根・にんじんと同じ「根菜」なのに、さつまいもだけ保存ルールが真逆です。 根菜やからって、0℃寄りに冷やしたらアウトになりやすい。

そしてもう一つ、大きな勘違いがあります。 「新鮮な掘りたてが一番うまい」という誤解です。

結論だけ先に言います。 さつまいもは 「13〜16℃で守りながら、熟成(時間を置く)させた時」 が一番甘くなります。

① 結論:さつまいもは「13〜16℃」が正解(冷蔵庫は寒すぎ)

さつまいもは、専門的な貯蔵目安として 55〜60°F(約13〜16℃) が推奨されます。ここから外すと、「甘さがどうこう」より先に、傷み方が変わってしまいます。

② 冷蔵庫に入れると何が起きる?:低温障害

さつまいもは南方系で寒さが苦手です。 冷蔵庫(約3〜8℃)のような低温に長く当たると、低温障害(chilling injury)が起きやすくなります。

出やすいサイン

  • 中が黒っぽく変色する
  • えぐみ・苦みが出る
  • 食感が水っぽい、または芯が硬くなる
  • そこから腐敗しやすい

③ 【農家の常識】さつまいもは「鮮度」より「熟成」

ここが今日一番大事な話です。 他の野菜は「鮮度」が命ですが、さつまいもは逆。「熟成」が命です。

なぜ時間を置くと甘くなる? 収穫直後のさつまいもは、成分のほとんどが「デンプン」で、実はあまり甘くありません。 適切な温度(13〜15℃前後)で貯蔵することで、デンプンが分解され、**「ショ糖(砂糖の主成分)」**などに変わっていきます。 これを「糖化」と呼びます。

一番おいしいのはいつ? 品種にもよりますが、収穫(10〜11月頃)から 1ヶ月〜2ヶ月寝かせた頃 が甘さのピークに近づきます。 つまり、**「1月〜2月の寒い時期に食べる焼き芋」**が一番甘くて美味しいのは、理にかなっているんです。

  • 秋(10月頃):掘りたて。ホクホク感は強いが、甘さは控えめ(天ぷら向き)。
  • 冬(12月〜2月):熟成済み。ねっとり甘い(焼き芋向き)。

もし「土付きの掘りたて」を買ったら、すぐに食べずに新聞紙に包んで2週間〜1ヶ月ほど常温(13〜16℃)で寝かせてみてください。別人のように甘くなります。

④ 家庭の“現実解”保存:3点セット

家庭で湿度管理は難しいので、やることは3つだけに絞ります。

  1. 洗わない(食べる直前に洗う) 水気はカビ・腐敗の原因になりやすいので、基本は乾いたまま。
  2. 新聞紙(または紙袋)で1本ずつ包む 乾燥を防ぎつつ、適度な呼吸をさせます。
  3. 段ボール+暗い場所+13〜16℃に近い所へ 目安は、冷えすぎない玄関・廊下・納戸。 ※冬の夜に10℃を切る場所(床際・窓際・外物置)は避けるのが無難です。

⑤ 目利き:買う時点で半分決まる

保存テクの前に、ここで差がつきます。

良いさつまいも

  • 触って硬い(張りがある)
  • 皮がなめらかで傷が少ない
  • 両端がジメッとしていない/汁が出ていない

避けたいさつまいも

  • 押すと凹む柔らかい部分がある
  • 深い亀裂、カビっぽい点がある
  • 端が黒く傷んでいる(低温障害の可能性あり)

今日の「農家の食べ方」(5分)

熟成に成功した芋ほど、余計な味付けはいりません。シンプルが一番うまいです。

【レンチン→追い塩バター】

  • 作り方
    1. 食べる分だけ洗う。
    2. 濡らしたキッチンペーパー+ラップで包む。
    3. 600Wで3〜5分(竹串がスッと通るまで)。
    4. 仕上げにバター+塩ひとつまみ(あれば黒胡椒)。
  • コロンのひとこと: 「冷蔵庫に入れず“適温”で寝かせた芋は、レンチンだけでもスイーツ並みになります。」

[詳しくはこちら(直売所・オンラインショップへのリンク)]


まとめ

さつまいもは、根菜シリーズの中でも別枠。 0℃寄りが正義じゃない。13〜16℃が正義

そして、鮮度より「熟成」。 焦らず寝かせて、デンプンが糖に変わるのを待つのが、農家の楽しみ方です。

次回予告(第5回) 次回は しいたけ

野菜の保存と同じノリで冷蔵庫に入れると、「水滴」で一気に負けるやつです。 「乾かしすぎてもアカン/濡らしてもアカン」の分かれ道、短くまとめます。乞うご期待。

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