大根・にんじんと同じ「根菜」なのに、さつまいもだけ保存ルールが真逆です。 根菜やからって、0℃寄りに冷やしたらアウトになりやすい。
そしてもう一つ、大きな勘違いがあります。 「新鮮な掘りたてが一番うまい」という誤解です。
結論だけ先に言います。 さつまいもは 「13〜16℃で守りながら、熟成(時間を置く)させた時」 が一番甘くなります。
① 結論:さつまいもは「13〜16℃」が正解(冷蔵庫は寒すぎ)

さつまいもは、専門的な貯蔵目安として 55〜60°F(約13〜16℃) が推奨されます。ここから外すと、「甘さがどうこう」より先に、傷み方が変わってしまいます。
② 冷蔵庫に入れると何が起きる?:低温障害

さつまいもは南方系で寒さが苦手です。 冷蔵庫(約3〜8℃)のような低温に長く当たると、低温障害(chilling injury)が起きやすくなります。
出やすいサイン
- 中が黒っぽく変色する
- えぐみ・苦みが出る
- 食感が水っぽい、または芯が硬くなる
- そこから腐敗しやすい
③ 【農家の常識】さつまいもは「鮮度」より「熟成」

ここが今日一番大事な話です。 他の野菜は「鮮度」が命ですが、さつまいもは逆。「熟成」が命です。
なぜ時間を置くと甘くなる? 収穫直後のさつまいもは、成分のほとんどが「デンプン」で、実はあまり甘くありません。 適切な温度(13〜15℃前後)で貯蔵することで、デンプンが分解され、**「ショ糖(砂糖の主成分)」**などに変わっていきます。 これを「糖化」と呼びます。
一番おいしいのはいつ? 品種にもよりますが、収穫(10〜11月頃)から 1ヶ月〜2ヶ月寝かせた頃 が甘さのピークに近づきます。 つまり、**「1月〜2月の寒い時期に食べる焼き芋」**が一番甘くて美味しいのは、理にかなっているんです。
- 秋(10月頃):掘りたて。ホクホク感は強いが、甘さは控えめ(天ぷら向き)。
- 冬(12月〜2月):熟成済み。ねっとり甘い(焼き芋向き)。
もし「土付きの掘りたて」を買ったら、すぐに食べずに新聞紙に包んで2週間〜1ヶ月ほど常温(13〜16℃)で寝かせてみてください。別人のように甘くなります。
④ 家庭の“現実解”保存:3点セット

家庭で湿度管理は難しいので、やることは3つだけに絞ります。
- 洗わない(食べる直前に洗う) 水気はカビ・腐敗の原因になりやすいので、基本は乾いたまま。
- 新聞紙(または紙袋)で1本ずつ包む 乾燥を防ぎつつ、適度な呼吸をさせます。
- 段ボール+暗い場所+13〜16℃に近い所へ 目安は、冷えすぎない玄関・廊下・納戸。 ※冬の夜に10℃を切る場所(床際・窓際・外物置)は避けるのが無難です。
⑤ 目利き:買う時点で半分決まる

保存テクの前に、ここで差がつきます。
良いさつまいも
- 触って硬い(張りがある)
- 皮がなめらかで傷が少ない
- 両端がジメッとしていない/汁が出ていない
避けたいさつまいも
- 押すと凹む柔らかい部分がある
- 深い亀裂、カビっぽい点がある
- 端が黒く傷んでいる(低温障害の可能性あり)
今日の「農家の食べ方」(5分)
熟成に成功した芋ほど、余計な味付けはいりません。シンプルが一番うまいです。
【レンチン→追い塩バター】

- 作り方:
- 食べる分だけ洗う。
- 濡らしたキッチンペーパー+ラップで包む。
- 600Wで3〜5分(竹串がスッと通るまで)。
- 仕上げにバター+塩ひとつまみ(あれば黒胡椒)。
- コロンのひとこと: 「冷蔵庫に入れず“適温”で寝かせた芋は、レンチンだけでもスイーツ並みになります。」
[詳しくはこちら(直売所・オンラインショップへのリンク)]
まとめ
さつまいもは、根菜シリーズの中でも別枠。 0℃寄りが正義じゃない。13〜16℃が正義。
そして、鮮度より「熟成」。 焦らず寝かせて、デンプンが糖に変わるのを待つのが、農家の楽しみ方です。
次回予告(第5回) 次回は しいたけ。

野菜の保存と同じノリで冷蔵庫に入れると、「水滴」で一気に負けるやつです。 「乾かしすぎてもアカン/濡らしてもアカン」の分かれ道、短くまとめます。乞うご期待。

コメント